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カワハギ釣りの巻
   カワハギは気軽に狙える釣り物である一方、
  エサ取り名人の異名をほしいままにする難敵
でもあり、この釣りに魅せられ、のめり込む
  人も多い。
  “海のヘラブナ釣り”とも呼ばれ、カワハギオンリー
  の釣りクラブも関東各地にいくつもあって、
会員相互の親睦や、釣技の向上をはかっている。
 一般には、かなり難しい釣りで通っている。
事実、カワハギの乗合船には、釣暦何十年を誇る
海千山千たちがウヨウヨして、初心者に有形無形
の威圧感を与えている。
しかし、いずれも恐れるにはあたらない。釣りの
常識には案外嘘が多いもの、釣らず嫌いのあなたも、
ぜひチャレンジしてみては。
《魚の特徴》
 カワハギが好んで生息する海域は、潮通しのいい
岩礁帯と岩礁帯の間にある砂地で、通常、小型のエビ
やカニ、虫類、貝類などの動物性の海洋生物を
ついばんでいる。そのためクチバシのように
発達した歯と、未蕾とよばれる味覚の識別能力に
優れた唇を持っている。
また、ヒレを巧みに動かして、上下左右の細かな動きは
もちろん、水中での一時停止、つまりホバーリング
もできるヘリコプターのような泳法を得意としている。
したがって、釣り人に気づかれぬうちに、エサを
かじり取ってしまうのであり、したたかな魚とよばれ
釣り人をカリカリと熱くさせてしまうのだ。
《道具》
〔竿について〕
 乗合船での使用オモリは周年25号。
したがって、竿の負荷も25号に対応した、2メートル
前後で先調子のカーボン竿がよい。一日持ち続けるので
軽い方が良い。竿には硬目のものと、軟らか目の物がある。
硬目の竿であれば、カワハギがエサをついばむときの、
竿先の一瞬持ち上げるような、わずかな変化は
見つけづらい。その反面、ハリを口に含んだとき、
ちょっと頭上に竿をかざしただけで十分にハリ掛りする。
他方、軟らか目の竿先には、細かな異変も逃さず伝える
特性がある。しかし、瞬間、竿を立てても、竿の
弾力が合わせのアクションを吸収する分、ハリ掛りは
鈍くなる。
硬軟どちらにせよ一長一短があるわけで、各人の
好みによって決めるしかない。何よりも大事なのは、
その竿の特性をしり、よく使いこなすことだ。
〔リール〕
リールは、新素材系なら3〜4号が100メートルも
  巻ける小型の両軸リールで、ギア比は1対4.5以上
の高速回転リールがよい。
  〔集魚板〕
   カワハギ釣りの独特のアイテムに集魚版がある。
  ステンレス製からプラスチック、七宝焼、貝殻板と
  材質や形状も各種ある。
  仕掛けを目立たせ、カワハギを寄せ集めるための
  アイデアだが、それなりの効果もあるものの潮流の
  抵抗を受けるため、アタリを鈍らせるデメリットも
  ある。
最近では中通しオモリとビーズ玉を使った集魚版が
増えてきた。中通しオモリは仕掛けを底に這わせてから
誘う釣法などでは有効に働く。
潮濁りの日や底荒れした後では必須アイテムだが、
潮の早い日は付けないほうが無難。イワシの頭も
信心からだけど自らの信ずるところに従うのが一番いい。
〔仕掛け〕
   カワハギはほぼ海底近くに生息する。根や定置網
  などがある場合は、かなりの中層までくることもあるが、
  大抵は底から50〜60センチまでがタナと考えてよい。
  したがって、ハリス間隔の短い胴付き2〜3本バリの
  仕掛けを使う。ハリスは幹糸にジカ付けでも、自動
ハリス止めを使っても良い。ただし、どの場合でも
ハリは外側に向くように付けること。
ハリス、幹糸の太さ…硬質ナイロン2.5〜3号
  ハリス長…5〜8センチ
  オモリとハリスの間隔…3〜8センチ
  ハリスとハリスの間隔…12〜15センチ  
  ハリ…ハゲ4〜5号、丸セイゴ8〜9号
  チヌカワハギ中、大
ハリのチモトに夜光玉を入れる。
  〔エサの付け方〕
   まずアサリの水管に掛ける。→次に水管と反対側の
  広い部分からハリを通してゆく→最後にハリ先を
  ワタの中に隠すように付ける。
  〔基本的な釣り方〕
   リールをフリーにして、スプールを親指で押さえておく。
  続いて、竿の弾力を使って、オモリを振り子のように
  船べりを直角方向のやや潮上に投入し、スプールの
  親指を離し、糸を出す。オモリが着底したら糸ふけを
  取り50〜60センチ誘い上げる。
  魚信がなければ再び着底させ、同じことの繰り返し。
  2〜3回繰り返したら、仕掛けを上げてエサを点検する。
  〔誘い釣り〕(通常の釣り方だが、魚の食いが立つた
   時にも有効)
   片手は竿、もう一方の手はリールのハンドルを持ち
頭上にかざしてゆく。
底スレスレの状態で魚信を待ち、仕掛けの長さの分
だけ追食いさせる。合わせはリールのハンドルを
2〜3回回転させる。
〔待ち釣り〕風波のある時、魚のタナが高い時、
 根掛かりの多い場所で有効)
竿先を目の高さに備え、常に一定を保ちつつ、異変
を察知する。
常に底を切って魚信を待つが、船の上下動には糸を
伸ばしたり、巻いたりの操作をする。
竿先の変化で合わせるが手首を起こす程度が基本。
〔タタキ釣り〕(魚影の薄い時、潮濁りの時、外道の
多い時などに有効)
オモリを底に付けてから竿先で5〜6回水面をたたく
ように仕掛けを激しく揺らせる。
エサの存在をアピールするのと同時にベラやトラギス
といった外道をカワハギが近づくまで寄せ付けない。
こうした動作の後は上の待ち釣りの要領へ。集魚版は
夜光ビーズやタコベイト、中通しオモリなどがいい。
〔這わせ釣り〕(底潮が早い時や魚のタナが低い時、
あるいは食い渋りにも有効)
着底は糸フケができるくらいに仕掛け全体を底に這わせ
てから後は待ち釣りの要領で。
早い潮流に仕掛けが浮き上がるのを防ぐ。
また通常の就餌スタイルに近いので抵抗なくエサを
ついばむ。集魚版に金属製のものや中通しオモリの
3〜4号を使うと這わせやすい。
 
おわりにどんな釣りにも言えることだが、セオリーが
あるようで、実はそのとおりにいかぬことも結構多い。
そこで、蛮勇を奮っていろいろ試すのが早道。習うより
慣れろを実践してもらいたい。