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イナダ釣りの巻
8月に開幕する相模湾のワカシも9月末にもなると、釣り場は相模湾
全域から東京湾口剱崎沖にまで、広い範囲で釣れているのが特徴。
型も40センチオーバーの立派なイナダに変身。時には45センチ超級
の良型もまじり、釣り人をますます熱くさせる。
後期はビシ釣りがおすすめ
イナダは、初期のワカシ級のうちは大きな群れを作って、海面近くを
小魚を追って回遊しているが、成長するにつれ、いくつもの小さな群れ
に分れ、次第に泳層も深くなってくる。10月ともなると、タナは中層か
ら海底近くが中心となる。
また成長するにつれ次第に気難しくなり、サビキやカッタクリの皮な
ら何にでも飛びついてきた初期と異なり、潮の関係で気に入ったもの以
外には、なかなか興味を示さなくなってしまう。
そうなると、バケ類の使用はより高度なテクニックが必要となり、当
たり外れが大きい。むしろ、タナでコマセを振り、イナダの好むオキア
ミやイカエサで食欲を誘うビシ釣りのほうが、比較的安定した釣果をも
たらしてくる。
そこで今回は、イナダ後期の必釣法として、先ず基本的なビシ釣りの
仕掛け、釣法を述べる。
後期の釣り場と釣法の選択
相模湾の場合、初期は湾奥部で釣れ盛っていたワカシは、イナダ級に
成長するにつれ、次第に三浦方面に移動。そして群れの先陣は城ヶ島沖
に達し、一部は東京湾にも回遊してくる。
一方、相模湾奥にも真鶴方面から新群れが入るので、湾奥部で10月、
三浦地区で11月、剱崎地区では12月一杯まで楽しむことができる。
茅ヶ崎沖エボシ周辺〜江ノ島沖
いずれも水深20〜30メートルの岩礁帯に、11月初旬ごろまで次々に
新群れが入る。基本釣法はオキアミエサのビシ釣り。潮況によりカッタ
クリ有効。後期のタナは海底から5〜10メートルであるが、釣況により
沖合いの定置網周りに移動した場合は、水面から5〜15メートルに変わ
る。
葉山沖、秋谷沖、佐島沖
例年9月末頃、相模湾で最も乗合船が集結する釣り場。時間帯により、
このエリヤの中で食いの立つポイントが目まぐるしく変わる。
水深は20〜35メートル。タナは水面から5〜15メートル。船や釣り人
により、オキアミエサのビシ釣りとカッタクリが半々。確実に土産をキ
ャッチするならビシ釣りが無難、タナが上ずる日はカッタクリ有利。
長井沖亀城根
11月ごろまで、イナダ釣りの大船団が集結する最もホットな釣り場。
10月の声を聞けば、例年どおりこの釣り場が中心になるものと予想され
る。水深は25〜45メートル。タナは水面から15メートル前後が中心。
有数のコマセダイのポイントでもあるので、イナダはオキアミエサに慣
れてしまうのか、後期ともなるとバケにはみむきもしないため、ビシ釣
り一色になる。
城ヶ島西沖
亀城根のイナダがさらに南下。10〜12月にかけて40〜50センチに育
ち、ワラサ級も回遊。水深は25〜50メートル。後期のタナは海底から
5〜10メートル。オキアミエサのビシ釣りが主流であるが、潮況により
カッタクリや夜光パイプのシャクリツリも有効。例年、メジマグロや本
ガツオも回ってくるので思わぬ外道に恵まれることもある。
東京湾口、内房地区
東京湾口部もイナダの回遊が早い時は、8月末ごろ剱崎地区のイナダ
乗合船がスタートする。城ヶ島周辺を攻めオキアミエサのビシ釣りと夜
光パイプのシャクリ釣りが中心。城ヶ島東沖から剱崎沖にかけて12月
一杯、イナダの群れが滞留する。
道具
湘南、三浦地区の場合、後期のイナダ釣法として、最も安定している
ビシ釣りから話を進める。
竿
竿先はあまり軟らかくない方がコマセが振りやすく、取り込みも楽だ。
基本的には2.4〜2.7メートルでビシの重さが40〜60号の場合、オモリ
負荷60号前後、七三調子で腰に粘りがあるタイプが使いやすい。食い
渋り時などに置き竿で狙う場合は、2.7〜3.3メートル、オモリ負荷30
〜50号の軟調長竿を使う。
リール
中型両軸タイプで6〜8号の道糸を300メートル巻けるもの。水深計付
きが望ましい。
道糸
新素材系の6号を300メートル。先糸に同号のナイロンを5メートル結
んでおく。正確なタナ取りのためにはマーク付きが便利。
コマセカゴ
50〜80号のコマセカゴをテンビンの下部に付けるが、相模湾ではカゴの
大きさに制限があり、船によって重さが異なることもあるので、事前に
船宿に確認してから用意する。
クッションゴム
イナダ級なら2ミリ径、ワラサが交じるようなときは3ミリ径、30〜50
センチのクッションゴムをテンビンに付ける。
仕掛け
片テン2本バリが一般的だが、その種類は極めて多く、慣れないうちは
船宿常備のものを使ったほうが無難だろう。
ハリスの太さは5号を標準に、食い渋ったら4号に落とす。長さは3〜
4メートル。マダイと両狙いなら4.5メートルにする。
空バリ(夜光玉グリーン4号前後)にオキアミエサを刺すのが基本だが
その日の潮により夜光パイプ、ウイリー、スキンなどの擬餌に食いが立
つこともあるので、なるべく多くの種類を用意しておく。
釣り方
ポイントに着いたら、コマセを詰め、オキアミをハリに刺して準備を整
え、船長の合図で投入する。水深計や道糸を見て、指示されたタナまで
カゴを下ろしたら、竿先をあおって一気にコマセをまく。そしてリール
を2〜3回巻き、ハリをコマセの煙幕に入れる。
アタリはコツッとしてからひと呼吸おいてギュンと竿先を持ち込む。
コマセを振ったら竿先に注目し、最初のアタリがきたら、引き込まれる
前にリールを巻いて頭を上に向けてしまうことである。
最初のアタリを見落とし、竿先が引きずり込まれてから気がつくこと
もあるが、あわてることなく、強い引きは竿でためてかわし、引きが止
まったところで一気にリールを巻く。
慎重になりすぎてモタモタしていると、イナダに引き回されて、オマ
ツリや口切れでバレてしまう。
《カッタクリ釣法》
10月の声を聞くとイナダ狙いは、それまでのカッタクリ主体の釣法か
ら、一気に竿釣りへ移行していく。例年のパターンといえばそれまでだ
が、ここ数年その傾向は顕著であり、竿釣りのほうに分があるという以
前の問題、つまりこの季節は竿釣りという固定観念を多くの釣り人が知
らず知らずのうちに持っていると思えなくもない。
バケを当て、たぐり方を工夫する。これが、カッタクリ釣りの最大の
魅力であり、それが当たったときの快感と見返り(釣果)は竿釣りの比で
はない。それは分っていても、当たりか外れかというギャンブル性の強
さが感じられ、次第に敬遠されてしまう、というのが実情ではないだろ
うか。しかし、11月になっても、イナダはカッタクリで釣れる。これは
事実。また、これからの時期のカッタクリは、ワカシのころと比べもの
にならないほど面白い。では、どうすれば釣れるのか。そこを考えてみ
よう。
道具
手釣り糸24〜27号
先糸ナイロン8号3本より
中型ステンレス片テンビン
ステン缶50号
クッションゴム2.5ミリ径、30〜50センチ
仕掛け
ハリス、ナイロン8〜10号、2.2メートル2本バリ
1. 2メートルからエダス40センチを出す。
バケ……ハモ、バラフグ、ナマズなど
ハリ……9〜11号
釣り方
たぐり方とバケの選定がカギ
イナダがカッタクリのバケを追うのはなぜか。当然、小魚やエビなど
の生物と間違えてだろうが、エサそのものにバケが見えるからとは思え
ない。小魚の動きや、発する光(例えばイワシのウロコの輝き)と、スイ
ッスイッと動き、キラッと光るバケが似て見えるから、と考えたほうが
納得がいくだろう。
そこでバケの動きはカッタクリ方、光はバケの種類に左右されると見
ていい。型ではなく、動きと光をいかにエサに似せるかがカギになる。
まず、カッタクリ方だが、よく説明される、両手で八の字を書くよう
なリズムでということは忘れてよい。これはワカシ級を相手にしたとき
の話だ。同じスピードでたぐっても、イナダは振り向いてくれないだろ
う。一言で言えば強弱をつけたカッタクリ方となるが、特にスローな動
きを織り交ぜる必要がある。
具体的な一例をあげると、タナの指示が海面から30メートルと出たな
らば、まず35メートルまでステン缶を下ろす。初めの2〜3手はパッパッ
パとたぐり、そこからは、スーッと大きくゆっくり頭上まで糸をつかみ
上げるようにたぐる。パッパッバ、スーッ、スーッ、という感じだ。こ
れでタナの上15〜20メートルまで探ってみる。
もちろん断ったようにこれは一例であり、この他にもたぐり始めにキ
ュッと力を込め、後はゆっくり引いたり、途中で止めてみたりと様々な
タグリ方を試すことが必要だ。
次にバケについてだが、イナダ乗合を出す船宿では、すでに一ヶ月以
上は続けているところが多いから、今年の当たりバケの流れがある程度
読めているはず。そこで釣行前日までに、船宿に問い合わせるのが一番
手っ取り早い。指示されたものを中心に、それ以外を3〜4種類持って
行けばよいだろう。